射出成形の金型とは？構造・種類・設計の基本を徹底解説

導入：射出成形の品質は「金型」で9割決まる

「射出成形でプラスチック部品を作りたいが、金型が高額で驚いた」
「金型の構造や種類が複雑で、何を基準に業者を選べばいいか分からない」
「"金型設計が重要"と聞くが、具体的に何が重要なのか？」

射出成形 において、「金型（かながた）」 は製品の品質・コスト・生産スピードのすべてを左右する、まさに「心臓部」です。たい焼き器がたい焼きの形を決めるように、金型はプラスチック製品の形状、寸法精度、外観の美しさをすべて決定づけます。その設計・製作の良し悪しが、成形品（製品）の出来栄えの9割を決めると言っても過言ではありません。

しかし、金型は非常に高価で専門性が高く、発注担当者様にとっては最も分かりにくい領域の一つです。

この記事では、射出成形の発注を検討されている担当者様に向けて、以下の点を徹底的に解説します。

• 射出成形金型がなぜそれほど重要なのか、その基本的な「構造」
• 金型の代表的な「種類」（2プレート、3プレートなど）と、その使い分け
• 製品の品質を左右する「金型設計」の基本と重要性
• 金型業者を選ぶ際に、絶対に外してはいけないポイント

この記事を最後まで読めば、射出成形金型の基礎知識が身につき、高額な金型投資で後悔しないための「業者選びの基準」が明確になります。特に、金型から成形・組立までを一貫対応できるパートナーの重要性について、詳しく解説していきます。

射出成形金型とは？その重要性と基本構造

「射出成形金型」 とは、射出成形機 に取り付けられ、溶けたプラスチック（樹脂）を流し込み、冷やし固めて製品の形状を作るための「金属製の型」です。材質は、量産用の高耐久なものは特殊鋼（工具鋼）、試作用の簡易的なものはアルミ合金などで作られます。

金型が重要な理由は、第一に「品質」です。ミクロン単位の精度で設計・製作された金型でなければ、高精度なプラスチック部品は作れません。第二に「コスト」です。金型は安くても数十万円、大型製品や複雑な形状の金型になれば数千万円にもなる高額な投資です。この金型の設計が悪いと、成形不良が多発し、結果として製品単価が上がったり、金型を修正・再製作する必要が出たりと、莫大な損失に繋がります。

金型の基本構造：「固定側」と「可動側」

射出成形金型は、非常に多くの精密部品で構成されていますが、基本構造は大きく2つの部分に分かれます。

• 1. 固定側（こていがわ）
  射出成形機の「射出ユニット（ノズル）」側に固定される部分です。溶けたプラスチックが流れ込む「スプルー」と呼ばれる入口があります。主に製品の「外観面（表面）」を形作る「キャビティ（Cavity / 凹型）」が彫り込まれています。
• 2. 可動側（かどうがわ）
  射出成形機の「型締ユニット」側に取り付けられ、型開閉時にスライドする部分です。主に製品の「内面（裏面）」を形作る「コア（Core / 凸型）」が彫り込まれています。また、成形品を金型から突き出すための「エジェクターピン」という機構が内蔵されています。

金型が閉じられた際、この「キャビティ」と「コア」の間にできる隙間こそが「製品の形状」となり、そこに溶けたプラスチックが流れ込むのです。

【事例紹介】金型設計の最適化でコストダウンを実現

金型設計 のノウハウが、いかにコストと品質に影響するかを示す事例をご紹介します。

課題：大型部品で、成形不良（ヒケ）とサイクルタイムの長期化が問題に

あるお客様は、OA機器用の大型樹脂製品の生産で悩んでいました。他社製の金型では、製品の肉厚な部分に「ヒケ（成形収縮による凹み）」という不良が多発。さらに、ヒケを防ぐために冷却時間を長く取る必要があり、生産サイクルが伸びてコスト高になっていました。

泉商事の解決策：冷却回路とゲート位置の最適化による「一貫対応」

当社で金型設計を根本から見直しました。

1. 金型設計の最適化： ヒケが発生する箇所の肉厚を、強度を保ったまま均一化する形状変更（VAVE提案）を行いました。さらに、金型内部の「冷却水管」の配置を最適化し、問題箇所を効率的に冷やせるよう再設計しました。
2. 成形条件の最適化： 樹脂の流入抵抗が最も少なくなるよう「ゲート（樹脂の入口）」の位置を変更。当社保有の大型射出成形機でテスト成形を繰り返し、最短時間で高品質な成形ができる条件（射出圧力・冷却時間）を割り出しました。
3. 結果： ヒケ不良はゼロになり、冷却時間も30%短縮。トータルコストの大幅な削減に成功しました。

このように、金型設計と成形技術は「セット」です。両方を熟知した「一貫対応」 こそが、問題を根本から解決する鍵となります。

【種類別】射出成形金型の構造と選び方

射出成形金型 は、その構造によっていくつかの種類 に分類されます。最も代表的な分類が「プレート（型板）の枚数」による違いです。

金型の代表的な種類：「2プレート（二面型）」と「3プレート（三面型）」

製品の形状や、材料の通り道（ランナー）をどこから取るかによって、金型の基本構造を選択します。

1. 2プレート金型（二面型）

• 構造： 金型が「固定側」と「可動側」の2つに分割される、最もシンプルで一般的な構造です。
• 特徴： 型が開くと、成形品は材料の通り道（スプルー・ランナー）と繋がったまま、可動側（コア側）に残ります。
• メリット： 構造が単純なため、金型コストが最も安く、メンテナンスも容易です。
• デメリット： 製品の「側面」からしか材料を注入（サイドゲート）できないため、ゲート（入口）の位置に制約があります。また、成形後に製品とランナーを切り離す「ゲートカット」の工程が別途必要です。
• 主な用途： 雑貨、コンテナ、機械部品など、ゲート跡が側面に残っても問題ない製品。

2. 3プレート金型（三面型）

• 構造： 「固定側」「ランナーストリッパープレート」「可動側」の3つに分割される、より複雑な構造です。
• 特徴： 型が二段階で開きます。まずランナー部分が先に切れ、次に製品が取り出されます。
• メリット： 製品の任意の位置（上面など）にゲート（ピンポイントゲート）を設けることができます。また、型が開く動作と同時にランナーと製品が自動で切り離されるため、ゲートカット工程が不要になり、生産性が向上します。
• デメリット： 構造が複雑になるため、金型コストが2プレートより高くなります。
• 主な用途： キャップ類、小型の精密部品など、ゲートを中央に配置したい製品や、ゲートカットの手間を省きたい大量生産品。

この他にも、ランナー部を常に加熱して樹脂を溶けたままにし、材料ロスをゼロにする「ホットランナー金型」などがありますが、非常に高価になります。どの構造が最適かは、製品形状、必要数、コストのバランスで決まります。

金型設計の基本：失敗しないための5つのポイント

高品質な金型を設計 するためには、樹脂の流れや固まり方まで計算し尽くす必要があります。特に以下の5点が重要です。

1. パーティングライン（PL）の設定：
   金型の「固定側」と「可動側」の境目（分割線）をどこに設定するか。製品の外観に最も影響する重要な決定です。
2. ゲート方式と位置の選定：
   樹脂の「入口」をどこに、どのような形状（サイドゲート、ピンポイントゲート等）で設けるか。これが樹脂の充填バランスや、ヒケ・ソリといった不良に直結します。
3. 抜き勾配（こうばい）の設定：
   製品が金型からスムーズに抜けるよう、側面にあらかじめ付けておくわずかな「傾斜」のこと。これが無いと、製品が金型に張り付いて取り出せません。
4. 冷却回路（水管）の配置：
   金型内部に張り巡らせる「冷却水」の通り道。製品をいかに速く、均一に冷やせるかで、生産サイクルと品質（ヒケ・ソリ）が決まります。大型製品ほど、この冷却設計が難しくなります。
5. ガスベント（エアベント）の設計：
   樹脂が流れ込む際に、元々キャビティ内にあった空気を外に逃がすための「わずかな隙間」。これが無いと、空気が圧縮されて樹脂が充填されず「ショートショット」という不良になります。

他社比較：なぜ「金型から組立までの一貫対応」が最強なのか？

射出成形の発注で最もよくある失敗が、「金型製作」と「成形作業」を別々の会社に発注してしまうことです。

一般的な分業体制の課題：

• 「金型屋」は金型を作るだけ。「成形屋」は成形するだけ。
• 成形品に不具合（ヒケ、ソリ、バリなど）が出た際、「金型の設計が悪い（A社の責任）」のか、「成形の条件が悪い（B社の責任）」のか、責任の所在が曖昧になりがち。
• 金型の修正やメンテナンスのたびに、工場間で金型を輸送するコストと時間が発生する。
• さらに「組立」 までC社に頼むと、窓口が3つになり、管理工数が膨大になる。

これに対し、泉商事（第二工場）は、お客様のこれらの課題を根本から解決する「一貫対応」 体制を構築しています。

まとめ：射出成形金型のご相談は、一貫対応の泉商事へ

本記事では、射出成形の心臓部である「金型」 について、その構造、種類、そして設計の重要性を解説しました。

• 射出成形金型は、製品の品質とコストの9割を決める最重要部品。
• 基本構造は「固定側（キャビティ）」と「可動側（コア）」に分かれる。
• 主な種類として「2プレート（安価・汎用）」と「3プレート（ゲート自動カット）」がある。
• 高品質な設計には「ゲート」「抜き勾配」「冷却」など多くの知見が必要。
• 業者選びの鍵は、「金型設計」と「成形」を別々にせず、「金型から組立までの一貫対応」 ができるパートナーを選ぶこと。

高額な金型投資を成功させるには、金型だけを作る業者ではなく、その後の「成形」や「組立」 までを見据えて、トータルで最適解を提案できるパートナーが不可欠です。

泉商事株式会社は、金型の設計・製作から、中型～大型射出成形機（350t～1300t）での量産、そして最終的な組立まで、すべてをワンストップでサポートします。

「金型の費用は妥当か知りたい」
「大型の樹脂製品 を、金型から一貫して任せたい」
「今の金型で起きている不良を、根本から解決したい」

そんな課題をお持ちの担当者様は、ぜひ一度、泉商事にご相談ください。金型と成形を知り尽くしたプロフェッショナルとして、貴社のモノづくりを強力にバックアップします。